私はどちらかと言えば、子供の頃は苦手でした。 楽譜通りに、テンポ通りに、テーマを聞かせる...そのことに一所懸命で、楽しむ余裕などありません。
曲自体は嫌いではないのですが、楽譜通りに真面目にそのまま弾くのが正解、とい うイメージで、檻の中に閉じ込められているような感覚だったんです。
テーマを探して、テーマを出して、全てのパートがちゃんと聞こえるように。 あとは無難に弾く。(=なんかつまらない)
そんな私に新しい世界を見せてくれたのが、イタリアでの古楽器チェンバロのレッ スンです。
今まで弾いてきたバロック時代の曲はなんだったんだろう?? ...というくらい衝撃的な自由とセンスが求められる世界がそこにはありました。
同じ曲でも、楽器が違うと、こうも違うのかと驚きを隠せませんでした。
このレッスンでは、同じような悩みを抱えている方、 もしくはピアノの先生でJ.S.バッハの教え方に自信がない方(たくさんいらっしゃい ます)
また、これから初めてJ.S.バッハを弾いてみるという方に、
論理的、かつ音楽的に現代のピアノでどう再現するかを伝えていきます。
過去にインスタグラムでJ.S.バッハのお悩みアンケートを取ったところ、
・難しい
・フレージングがわからない
・音の出し方がわからない
・しっとり系の音の出し方がわからない
・ペダルはどこまで使っていいの?
・子供っぽくなる
・バッハらしく聞こえない
・声部の弾きわけができない
という回答がたくさん集まりました。
こちらへの答えが、このレッスンに全て詰まっています。
『ピアノで、どうJ.S.バッハを弾くのが正解なの?』
まず、正解を求めてはいけません。 何故なら、現代のピアノはJ.S.バッハの時代に存在しないから。
では、どうしたらいいのか?
私が出した答えは、
『ピアノという現代の楽器でどう応用したらセンス良く、美しく、元々の魅力を引 き出せるようになるか』を探究することです。
チェンバロの世界には毎回演奏が変わる、まるで『即興演奏』のJ.S.バッハが存在し たんです。
何通りもフレージングがあり、それを楽しむ事を初めて知りました。
よって、私の演奏も毎回同じではありません。 同じにしてしまうと、それ以外の答えが消えてしまうからです。 その時、その時、即興演奏しているつもりで楽しむことが大事です。
この、チェンバロ奏法を取り入れたJ.S.バッハの弾き方が自分のものになると、そ の後、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン...その後の時代の 作曲家たちの曲を弾く時にも活かされ、 今までとは全く異なるアプローチができるようになります。
例えば、ショパンはバッハを崇拝しており、影響を多大に受けているということ を、知識として知っていても、どれだけのピアノ学習者が、それが『どう反映され ているのか』を説明できるでしょうか。
この方法で全曲学んでいくと、少しずつ、今まで見えなかったものが楽譜に見えて くるようになります。 もちろん、私も研究者と名乗れるほどではありませんので、私が気づけるのはほん の一部の世界ですが...。
しかし、その見つけ方を知っているのと、知らないのとでは2次元の世界と3次元 の世界と同じくらいの差が出てきます。
その世界への入り口を、少しでも熱心な”ピアニスト”(ピアノ奏者)の皆さんに覗いていただけると幸いです。